舞鶴引揚記念館とは?展示の内容や引き揚げについて解説|訪れる前に見るべき映画も紹介

舞鶴引揚記念館

舞鶴を訪れる際、よく紹介される観光スポットの一つに「舞鶴引揚記念館」があります。

しかし、「引き揚げ」とは何か、また舞鶴引揚記念館ではどのような展示がされているのかを詳しく知らない方は多いのではないでしょうか。

引き揚げとは、第二次世界大戦後、海外からの日本人の帰国を指す歴史的な出来事です。そして舞鶴は、その引き揚げの重要な拠点となった場所でした。

そんな歴史的に重要な出来事を後世に語り継ぎ、平和の尊さを伝えるために舞鶴引揚記念館では当時の様子がよくわかる資料が紹介されてます。

この記事では、引き揚げの歴史や記念館の展示内容に加え、引き揚げに関連する歌や映画などの作品についてもご紹介します。訪問前にぜひ一度ご覧ください。

舞鶴引揚記念館の概要

舞鶴引揚記念館の外観画像

舞鶴引揚記念館は、昭和63年4月に全国からの寄付と舞鶴市民の協力により設立され、平成27年9月にはリニューアルオープンされた引き揚げに関する資料館です。

この舞鶴引揚記念館は、第二次世界大戦後のシベリア抑留や引き揚げの歴史を後世に伝えるとともに、平和の尊さを発信しています。

館内には全国から寄贈された約1万6千点の資料が保管されており、そのうち1000点以上が常設展示中です。

中でもシベリア抑留中に実際に使用された道具やコートなどは、当時の過酷な生活を物語っています。

また、平成27年10月には570点の収蔵資料がユネスコ世界記憶遺産に登録されました。

館内では定期的に企画展示も開催されており、特定のテーマに焦点を当てて引き揚げやシベリア抑留の歴史を深く学べる機会が提供されています。

さらに、土曜日と日曜日には語り部ツアーがおこなわれており、語り部の解説を通じてより深く引き揚げとシベリア抑留のことを知ることができます。

引き揚げとは

舞鶴港での引き揚げの様子を描いたジオラマの画像

引き揚げとは、第二次世界大戦の終結後に海外に残された日本人を日本へ帰国させることを指します。

戦争の影響で多くの軍人や民間人が満洲、朝鮮、台湾などの旧日本領土や戦地に660万人以上が取り残されたとされています。

その人々の速やかな帰国を実現するために、日本政府は日本各地の港を「引揚港」に指定しました。

その中でも舞鶴港は、昭和20年10月7日の初の引揚船入港から昭和33年9月7日の最終船入港まで、13年間にわたり合計約66万人の引揚者と1万6000柱以上の遺骨を受け入れました。

そして、戦後の新たなスタートを切る引揚者のために心を込めて支援をしていたのです。

また、昭和25年~昭和33年までにおいて舞鶴港は、国内唯一の引揚港として最後まで引揚者を受け入れ、日本の引き上げ事業において重要な役割を果たしました。

10月7日は「舞鶴引き揚げの日」

舞鶴に初めて引揚船が入港したのが昭和20年10月7日であることから、毎年10月7日は「舞鶴引き揚げの日」に制定されいます。そして、舞鶴引揚記念館ではその時期に合わせて平和祈念式典がおこなわれます。

舞鶴引揚記念館の展示や学びについて

舞鶴引揚記念館には、シベリア抑留体験者やその家族から寄贈されたさまざまな資料が展示されています。また、引揚者やその家族、引揚の地となった舞鶴の人々の様子についても知れ、当時の様子をテーマごとに詳しく学べます。

過酷な環境で過ごしたシベリア抑留での生活の様子

舞鶴引揚記念館の収容所再現の画像

舞鶴引揚記念館では、シベリア抑留中の生活について深く学べる展示が充実しています。

実際にシベリア抑留を体験された方が描いた「回想記録画」や現地で使用されていたコート、食器などが展示されており、当時の生活の様子を視覚的に感じることができます。

また、収容所(ラーゲリー)を再現したジオラマ模型や抑留生活体験室も設置されており、抑留者が置かれていた状況を体感的に理解できるような空間もあります。

舞鶴港で帰りを待つ家族たちの思い

舞鶴引揚記念館の館内展示品の画像

舞鶴引揚記念館では、舞鶴港で家族の帰りを待ち続けた方々の切実な思いを学ぶことができます。

なかでも、夫の帰りを待ち続けた妻が残した日誌や、岸壁で息子や夫の帰還を待つ「岸壁の母」「岸壁の妻」の展示は、家族の心情をリアルに伝えています。

戦後の厳しい状況下で、離れ離れになった家族が抱えた不安や希望などをひしひしと感じることでしょう。

引揚者を迎え入れる舞鶴の人々の様子

引き揚げの様子の画像

舞鶴引揚記念館では、引揚者を迎え入れる舞鶴の人々の温かい支援の様子も学ぶことができます。

戦時中、捕虜として生き残ることが恥とされた時代背景から帰国者の中には顔を上げられない人もいたといいます。

しかし、舞鶴の人々や家族は、彼らの帰還を心から歓迎し喜びあいました。

館内には、当時の写真や引揚者に提供された支給品が展示されており、舞鶴の人々がどのように引揚者たちの再出発を支えたかがわかります。

館内語り部ツアー

舞鶴引揚記念館では、土日祝日に「語り部ツアー」が開催され「NPO法人舞鶴引揚語りの会」のメンバーが案内をしてくれます。

語り部ツアーではそれぞれの展示品に込められた人の思いや当時の様子、背景などを解説してもらえため、引き揚げの歴史をより深く学べる貴重な機会になるでしょう。

また、次世代継承事業の一環として地元の中学生や高校生が「学生語り部」として館内案内やイベントに参加することもあり、引き揚げの歴史を伝える活動にも取り組んでいます。

NPO法人舞鶴引揚語りの会について

「NPO法人舞鶴引揚語りの会」は当時の引き上げの様子を語り継ぐために平成17年に設立されたボランティア団体です。現在会員数は70名以上となっており、舞鶴引揚記念館でのツアーガイドの他にも、毎年「語り部養成講座」を開催するなど引き揚げやシベリア抑留の歴史を後世に受け継ぐ活動がされています。

引揚記念公園と平引揚桟橋(復元)

引き揚げの歴史は、舞鶴引揚記念館の館内だけでなく周囲にも深く刻まれています。

特に、引揚記念館が位置する引揚記念公園と復元された平引揚桟橋は、当時の引き揚げの舞台を象徴する場所となっています。

引揚記念公園について

舞鶴引揚記念公園にあるオブジェや展望台の画像

引揚記念公園は、昭和45年に舞鶴引揚援護局の跡地を見下ろせる丘に作られ、引揚者の帰国を記念する場所として整備されました。

園内には平和を願う像や鐘が設置されており、カリヨンは30分ごとに季節に合わせた曲を奏でます。

展望台からは、美しい舞鶴湾とクレインブリッジが望め、引揚船が海の向こうからやってくる光景を想像しながら当時の歴史に思いを馳せることができます。

また、引き揚げやシベリア抑留を経験した人々が植えた桜の木々が展望台までの道沿いに並び、春には園内を美しく彩ります。

引揚記念公園は、引き揚げの歴史を感じるとともに、平和の象徴として訪れる人々に深い感銘を与えてくれる場所です。

平引揚桟橋(復元)について

平引揚桟橋(復元)は、平成6年(1994年)に「引揚を記念する舞鶴・全国友の会」によって再現されました。

当時の桟橋は、戦後、海外から帰国した引揚者たちが日本の地を最初に踏みしめた場所であり、家族が帰国を待ち続けた地でもあります。

夫や息子の帰還を待つ「岸壁の母・妻」の姿がこの場所にありました。

その歴史的を後世に伝えるために桟橋は復元され、当時の思いを未来につないでいます。

※平引揚桟橋(復元)は、舞鶴引揚記念館から車で約3分、徒歩で20分ほどの場所にあります。

舞鶴引揚記念館に訪れる前に触れておきたい作品

以下の作品は、舞鶴引揚記念館を訪れる前もしくは訪れた後に見ると、きっと作品や引揚に対する理解が深まるでしょう。そのため、ぜひ一度これらの作品に見てみてください。

↓選択すると詳細が開きます

岸壁の母は昭和29年(1954年)に流行した歌です。その後、様々な歌手によってカバーされており、映画やドラマにもなっています。戦争後、行方が分からなくなった息子のことを引揚船に乗って帰ってくると信じて待ち続けた母を描いた作品です。実際に息子の帰りを信じて、東京から舞鶴に何度も通い続けた方がモデルとなっています。

「ラーゲリより愛を込めて」は2022年12月に公開された映画です。作中ではシベリアでの過酷な労働環境やラーゲリ(強制収容所)での生活、日本で待つ家族の様子などが描かれており、シベリア抑留や引き揚げに関する理解がより深まる作品となっています。

YouTube:東宝MOVIEチャンネルより

「約束の果ては」2024年8月10日・11日の2日間にわたって舞鶴市総合文化会館で上演された朗読劇です。朗読劇プロジェクトREADING WORLDによる作品で、シベリア抑留中の人々を描いた作品となっています。2025年には同プロジェクトによる「約束の鎮魂歌」が8月2日〜4日の3日間で公演されることも決定しました。

「約束の果て」READING WORLD公式サイトはこちら

舞鶴引揚記念館にはカフェが併設されている

舞鶴引揚記念館の中にある桟橋カフェの画像

舞鶴引揚記念館の入り口を入ってすぐの場所にある「桟橋カフェ」は、ゆったりとした雰囲気の中で食事や軽食を楽しめるカフェです。

メニューにはカレーや丼ものがあります。また、小さなお土産コーナーも併設されており、旅の思い出にぴったりのお土産を選ぶことができます。

定期的にプロのヴァイオリニストによる生演奏がおこなわれ手織り、タイミングが合えば食事とともに特別な時間を過ごすこともできます。

さらに、前日までの予約でお弁当の注文が可能なため、行楽やスポーツのイベントに便利に利用できる点も魅力です。

舞鶴引揚記念館の詳細情報

営業時間9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料金引揚記念館のみの場合
一般:400円(団体:300円)
小学生~大学生:150円(団体:100円)
市内在住・在校の学生は無料

共通券の場合(引揚記念館と赤レンガ博物館に入れる券)
一般:600円
小学生~大学生:200円

※団体は20名以上から
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方は受付での提示で入館料が半額
定休日毎週水曜日(祝日の場合はその翌平日)
年末年始(12月29日~1月1日)
住所〒625-0133
京都府舞鶴市字平1584番地 引揚記念公園内
駐車場無料駐車場あり(大型バス可)
トイレ館内、駐車場
アクセス【車・タクシーの場合】
舞鶴若狭自動車道 舞鶴東ICより約15分
東舞鶴駅より約15分

【バスの場合】
京都交通バス:引揚記念館前下車 徒歩1分
ホームページ舞鶴引揚記念館
https://m-hikiage-museum.jp/