「舞鶴の歴史を知りたい」「平和学習を目的とした旅におすすめの場所が知りたい」「引き揚げやシベリア抑留について学びたい」
そんな人は、ぜひ舞鶴引揚記念館を訪れてみてください。
舞鶴市は、戦後13年間海外に在留していた日本人を受け入れる引揚港として多くの引揚者を迎え入れた歴史があります。
舞鶴引揚記念館は、そんな当時の記憶と想いを知ることができる施設です。
舞鶴引揚記念館を訪れれば、過去の出来事を「知る」だけでなく「平和について考える」時間にもなるでしょう。
この記事では、そんな舞鶴引揚記念館について詳しくご紹介します。
舞鶴引揚記念館とは?

舞鶴引揚記念館とは、「引き揚げ」や「シベリア抑留」に関する資料を保存・展示している資料館です。
また、語り部の育成や海外交流など、様々な活動を通じて「平和の尊さ」を次世代に伝える活動をしています。

舞鶴引揚記念館は、シベリア抑留や引揚体験者をはじめ、全国からの寄付と舞鶴市民の協力により昭和63年4月に開館。
開館以降全国から、引き揚げやシベリア抑留などに関する資料は1万6千点以上寄贈されており、そのうち、570点が平成27年10月10日にユネスコ世界記憶遺産に登録されています。
また、開館から30年となる平成30年に、幅広い世代が体感を通して理解や共感を深められる空間として「抑留生活体験室」や「企画絵画展示室」が増設され、グランドオープンしました。
舞鶴引揚記念館を訪れる前に知っておきたい歴史
1.引き揚げについて

引き揚げとは、第二次世界大戦の終結後、海外に残された日本人を日本本土へ帰国させた事業のことです。
当時、戦争の影響で多くの日本の軍人や民間人が戦地や旧日本領土に取り残されていました。
その数は約660万人。これは当時の日本人人口の約9%にも上ります。
そんな、海外に残された日本人の速やかな帰国を実現するために、日本政府が18の都市に「引揚港」を設置しました。
その一つとして舞鶴市が「引揚港」に指定されたのです。

舞鶴港は、昭和20年10月7日の初の引揚船入港〜昭和33年9月7日の最終船入港の13年間にわたり、346隻の引揚船と約66万人の引揚者、1万6000柱以上の遺骨を受け入れました。
引き揚げが進み日本各地の引揚港が閉鎖される中、舞鶴港は昭和25年以降、約8年間にわたり国内唯一の引揚港として最後まで引揚者を受け入れ続けたのです。

そして舞鶴の人たちは、戦後の日本での新たなスタートを切る引揚者のために心を込めて支援しました。
当時のまちの人たちは、自分たちの生活も豊かではない中、自宅からお茶やふかし芋などを持ち寄って振る舞っていました。
2.シベリア抑留について

引き揚げの歴史を語る上で、決して忘れてはならないのが「シベリア抑留」です。
シベリア抑留とは、戦争で人的・物的被害を受けたソ連復興の人員を補うために、敗戦国の人々が捕虜として連行された出来事のことです。
捕らえられた人のうち日本人の数は約60万人にもおよびます。

彼らは、マイナス30度を下回る極寒の地で鉄道や建物などを建設するために強制労働をさせられ、「ラーゲリー(収容所)」で、飢えと過酷な環境のなか日本に帰れる日を待ち続けたのです。
しかし、引き揚げで特に難航したのがシベリア抑留者でした。

ソ連軍の管理区域からの引き揚げが開始されたのは、引揚事業開始から1年3ヶ月後です。さらに、昭和25年5月〜昭和28年3月までの約3年間、引き揚げが中断されることも。
そして、引き揚げが再開された昭和28年3月〜昭和33年9月の最後の引揚船入港まで、シベリア抑留者の引き揚げは続きました。
2022年にシベリア抑留の歴史を描いた映画作品「ラーゲリより愛を込めて」が公開されました。
舞鶴引揚記念館を訪れる前にこの作品を見ておくと、より学びになるでしょう。
「ラーゲリより愛を込めて」
出典:YouTube 東宝MOVIEチャンネル 映画『ラーゲリより愛を込めて』予告【12月9日(金)公開】より
舞鶴引揚記念館の館内について

舞鶴引揚記念館の常設展示には、常に1,000点以上の資料が展示されています。
ここでは、そんな舞鶴引揚記念館の展示エリアやその内容についてご紹介します。
エントランスホール

捕虜として日本人が収容されていた場所を示す、シベリアや中央アジアにあった収容所の分布図があります。シベリア抑留の規模の大きさを感じることでしょう。
タイムトンネル

当時撮影された貴重な写真から始まる、常設展示室の出入り口です。入り口には、武装解除を命じられた日本人の列と足元に積み上げられた武器の数々。出口には、日本への生還を喜ぶ人々の姿があります。
苦境の記憶
〜世界恐慌からシベリア抑留まで〜

戦争の始まりからシベリア抑留までの一連の歴史を学ぶことができます。引き揚げの歴史に触れる前に、「どうして戦争が始まってしまったのか」「戦時中、日本はどんな状況だったのか」「なぜ、シベリア抑留が起きたのか」を振り返ることができます。
抑留生活体験室
シベリアの強制収容所での暮らしが体験できるコーナーです。シベリア抑留の体験者の回想記録画などをもとに空間が再現されました。抑留者の持ち物や−30度を下回る寒さの中、着用していた防寒着に触れることもできます。
帰還そして再会

引揚船が舞鶴港に入港し、人々が再会を果たす感動の瞬間を感じられる展示コーナーです。港を模したジオラマや引揚船の模型、歌や踊りで迎える舞鶴の人々の姿など、当時の温かな「おもてなし」の様子が見られます。
平和への祈り

引き揚げの歴史を通じて平和な未来へつなぐ、舞鶴引揚記念館の活動が紹介されています。抑留・引き揚げが縁となり、つながった国際交流の様子を知ることもできます。国境を越えて築かれた絆と平和への想いが感じられます。
企画絵画展示室

常設展示室では見られない貴重な資料が展示されるエリアです。当時の様子を描いた絵画の展示のほか、期間ごとに企画展が開催されます。現在の企画展示の情報は舞鶴引揚記念館のホームページをご覧ください。
https://m-hikiage-museum.jp/
*舞鶴引揚記念館のHPに移動します。
舞鶴引揚記念館の学びが深まるポイント
ユネスコ記憶遺産登録された資料
舞鶴引揚記念館には、570点のユネスコ世界記憶遺産に登録された資料が収蔵されており、白樺日誌や手作りのメモ帳、俘虜用郵便葉書などが展示されています。
紙もペンもない状況の中で、それでも思いを形にしようと手作りの道具で必死に書き残した言葉。
無事に届くのかも分からないが、家族を想って綴られた手紙。
その一文字一文字からは、彼らがその瞬間に抱えていた想いが伝わってくるでしょう。
シベリア抑留中に使っていた衣服や手作りの道具
シベリア抑留中は、物資が少ないため食器などを手作りしていました。また、支給された防寒着は極寒の地では心許ないものであったことがわかります。
これら一つひとつからは、シベリアで生きた人々の様子を思い描くことができるでしょう。
語り部が伝える引き揚げ・シベリア抑留体験者の話

舞鶴引揚記念館には、語り部が常駐しています。
そのため、語り部の解説を通して単なる史実だけではなく「人の記憶」を直接感じることができます。
「この笛を寄贈してくれた方は〜」
「このリュックを背負っていたのは当時小学3年生の子供で〜」など
引き揚げやシベリア抑留を体験した人や、その家族から聞いた話をもとに、展示品の背景を丁寧に伝えてくれるのです。
気になる展示品や疑問に思ったことがあれば、ぜひ語り部に尋ねてみてください。
土日祝日限定|語り部による館内ガイドツアー

舞鶴引揚記念館では土日祝限定で、語り部による館内ガイドツアーが実施されます。
この館内ガイドツアーでは、シベリア抑留や引き揚げの解説を聞きながら館内を巡ることができます。
参加費は無料なので、ぜひ館内ガイドツアーに参加してみてください。
舞鶴引揚記念館の周辺について
舞鶴引揚記念館の周辺にも、引き揚げの記憶を伝えるものがたくさんあります。
舞鶴引揚記念館を訪れた際は、建物周辺を散策するのもおすすめです。
1.舞鶴引揚記念公園
像やモニュメント
引揚記念公園には、戦争の悲惨さを風化させない想いや、平和への誓いを込めて建てられた像やモニュメントがあります。引き揚げの歴史をより立体的に知るためにも、ぜひ引揚記念公園内も散策してみてください。
100本以上の八重桜
引揚記念公園内には、引き揚げ体験者の方々が植樹した100本以上の八重桜があります。八重桜の幾重にも重なる花びらと長く咲いている姿からは生命力が感じられます。一本一本に込められた、戦争や引き揚げに関わったすべての人たちの想いを感じてみてください。
(桜は4月の中旬〜下旬、紅葉は11月中旬〜下旬が見頃)
展望台

引揚記念公園の展望台からは、復元引揚桟橋や、かつて引揚援護局が置かれていた場所が見えます。展望台からの風景に身を置きながら、引き揚げの地・舞鶴が辿ってきた記憶とそれぞれの人々の想いに心を寄せてみてください。
2.復元された平引揚桟橋

平引揚桟橋は、引揚者が帰国後初めて日本の地を踏み締めた場所です。
そこには、帰りを待つ家族や引揚者を温かく迎え入れる舞鶴の人々の姿がありました。
平引揚桟橋は一度無くなってしまいましたが、1994年に「引揚を記念する舞鶴・全国友の会」によって当時の姿が復元されました。
写真の右手には平和を祈る鐘、左手には帰国を果たせず異国の地で亡くなった人々の鎮魂碑があります。
舞鶴引揚記念館を訪れた際は、平引揚桟橋も訪れてみてはいかがでしょうか。
舞鶴引揚記念館から平引揚桟橋までは車で約3分の場所にあります。
舞鶴引揚記念館の活動紹介
舞鶴引揚記念館では、毎年「語り部養成講座」を実施しています。戦争経験者の高齢化によって語り継ぐ存在が危ぶまれており、「『次世代への継承』から『次世代による継承』」へと移行することが重要となっています。そこで、舞鶴引揚記念館が中心となって平和の大切さを語り継ぐ「語り部」を育成。2025年現在、80名以上の語り部が在籍しています。
舞鶴引揚記念館が地元の学校に平和学習を実施する中、子どもたちが自主的に語り部養成講座に参加するようになりました。そして、学生語り部が誕生。その数は約40名以上になります。(2025年現在)夏休みや休日などの館内案内やイベントなどでも学生たちが活躍。また、市内外から訪れる学生との同世代交流として、次世代による継承に取り組んでいます。
旧ソ連時代、シベリア抑留地であった都市との交流も行なっています。ウズベキスタンでは、当時抑留中の日本人が建設した「ナヴォイ劇場」なども視察。ウズベキスタンとの交流の様子は以下の資料をご覧ください。
よくある質問
舞鶴引揚記念館の基本情報
舞鶴引揚記念館
京都府舞鶴市字平1584番地 引揚記念公園内
【営業時間】
9:00~17:00(入館は16:30まで)
【入館料金】
一般:400円(団体:300円)
小学生~大学生:150円(団体:100円)
市内在住・在校の学生は無料
共通券の場合(引揚記念館と赤レンガ博物館に入れる券)
一般:600円
小学生~大学生:200円
※団体は20名以上から
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方は受付での提示で入館料が半額
【定休日】
毎週水曜日(祝日の場合はその翌平日)
年末年始(12月29日~1月1日)
【駐車場】
無料駐車場あり(大型バス可)
【アクセス】
車・タクシーの場合
舞鶴若狭自動車道 舞鶴東ICより約15分
東舞鶴駅より約15分
バスの場合
京都交通バス:引揚記念館前下車 徒歩1分
【ホームページ】
https://m-hikiage-museum.jp/
舞鶴引揚記念館のSNSアカウント
この記事の情報は2025年12月8日現在のものです。最新情報はお店のSNSやHPをご確認ください。
*予告なく記載されている内容が変更されることがあります。あらかじめご了承ください。















